ケアラー支援が介護を変える
はじめに(『ケアラー支援の実践モデル』)
はじめに
『ケアラー支援の実践モデル』(木下康仁編著、ハーベスト社、2015)より
ケアラー(carer )とは文字通りケア(care )をする人 (-er)のことである。一般的には「介護者」となるが、「養育者」の場合もあるし「介護・養育者」とみる方が適切な場合もある。身近な他者の日常生活、日々を生きるという営みを支えたり、他者によって支えられることは人間が社会を形成する根幹であり、その意味で ケアラーは常に存在している。しかし、多くの場合 その位置づけと役割は家族の定義要件と重なるため当然視され、注目されるとしても負担の大きさとその軽減など二次的な扱いとなりやすい現状にある。つまり、家族を構成する人間としてケアラーが存在するのではなく、例えば嫁、妻、母の役割として介護や養育が当然とされ、その結果、その役割は家族内的問題とされ外部からの支援につながりにくく孤立した状況となりやすかった。あるいは、伝統的家族役割が 社会規範としては薄らいでも現実的必要性からケアラーとなる家族員がいてもやむを得ないと受け止めやすい。その結果、ケアラーの実態はあいまいなままにおかれ、以前よりもむしろみえにくくなっている。オブラートに包まれた家族像は社会一般の意識には違和感をもたせないが、それだけでなく本書で明らかにしているように実は介護や養育でケアラーの支援に関わっている専門職の意識が専門性ゆえにケアラーを理解できていないという逆説もみられる。では、ケアラーという新しい言葉がなぜ今必要なのだろうか。
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