ケアラー支援が介護を変える
終章 ケアラー学に向けて(『ケアラー支援の実践モデル』)
終章 ケアラー学に向けて
『ケアラー支援の実践モデル』(木下康仁編著、ハーベスト社、2015)より
1 ケアラー学への視点
本書では、日常生活 に困難を抱える人々をインフォーマルな立場でさまざまに支援する人々をケアラーと総称し、そうした人々の多様な経験的世界、支援プログラムの実態と課題、ケアラーの貢献認識に基づく施策化の先進事例などを検討してきた。現在の日本において、家族介護者の代わりに、友人や身近な他者を含めた包括的概念としてケアラーを提起する理由は、介護や養育における家族の役割を自明視し、社会規範として強化し続け、その前提で社会保障サービスが議論され提供されていくという枠組みを相対化するためである。現実には家族の果たしている役割が大きな比重を占めているから、家族介護者とケアラーはかなりの部分重なる。しかし、強調したいのは重なる部分ではなく、重ならない部分の方である。例えわずかであってもその部分への着目は、現在直面しているミクロからマクロまでの課題に対して取り組む方向性を提供するからである。
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